アポロンはヒュアキントスという名の少年を可愛がっていました。二人は何をするにも一緒で、ある日鉄の輪投げをして遊んでいる時、地面から跳ね上がり、なんとヒュアキントスの額に当たってしまいました。地面に倒れた彼をアポロンが抱き起こすと、真っ赤な血が止めどもなく流れています。
あらゆる手をつくしますが、とうとう少年は亡くなってしまいます。「おまえが死んだのは私のせいだ。私も一緒に死にたいと思う。しかし神なので死ぬことがままならない。だが運命によって、一つに結ばれた、私とあなたはいつまでも一緒。これからは私の記憶の中に私の歌の中に生き続けるのだ」と言うと、ヒュアキントスの流した血は花に変わっていったのです。
その花は憂いをたたえた紫色でした。
それでもアポロンの悲しみは癒されることはありません。そこでアポロンは、さらにその花びらに「Ai Ai」と書いたのです。これはギリシア語で「悲しい、悲しい」と言う意味です。
※注:ギリシア時代ヒアシンスと呼ばれていた花は今日のヒヤシンスではなく、アイリスかヒエンソウではないかといわれています。