終炎（メーディア）
メーディアはギリシアから遠く離れた地、コルキスの王アイエーテースの娘で魔術を身につけた美しい王女だった。この国の宝である金羊毛を求めて、ギリシアの英雄達が乗ったアルゴー船がこの地に上陸して来た。その大将のイアソンに王女は恋をしてしまった。メーディアは父をあざむき、イアソンに助力し、首尾良く金羊毛を手に入れると二人は手に手を取って国を脱出した。激怒した王に追跡されるが、辛くも逃げ切り苦難の末イアソンの祖国イオルコスにたどり着いた。元来この国はイアソンが王位継承者であったが、あくどい伯父に奪われていた。メーディアは愛するイアソンの為に魔術を使い王を亡き者としたが、王位は変換されず、反逆者として追放されてしまった。二人はコリントスに安住の地を見つけ、二人の子を授かり幸せな日々を過ごしていたが、コリントス王には跡継ぎが無く、イアソンを一人娘の婿に望んでいた。彼もこの旨い話に乗り妻に離婚を迫った。これにはメーディアも怒り狂った。愛の為に父を裏切り、祖国を捨てて、イオルコスの王まで殺して夫に尽くしてきた自分は、いったい何だったのか。彼女は復讐を誓った。まず、夫の婚姻に同意を装い、王女に毒を塗った花嫁衣装を贈り、王女がそれを身につけると、たちまち炎に包まれそれを救おうとした王も焼かれてしまった。妻として、母として、女として幸せを求めて、愛に生きた一途な女の悲しくもはかない物語である。この作品は、そんな激しい愛の炎が終わりを迎えるクライマックスを表現したものである。

Copyright 1999 Masasuke Chiba