Vol-4 ギリシア神話

美少年の章
HANDSOME BOY

 

ナルキッソス

自分自身を愛した少年
ナルキッソス

君はなんて美しいんだ!僕は君を一目見るなり好きになってしまった。僕が毎日ここに来ているのに、君はちっとも返事をしてくれない。ただ、僕が微笑みかけると、君も水の中で微笑んでくれる。そして僕が手を差しのべて口づけしようと顔を寄せると、君はむなしく波紋の中に消えて行く。ああ、僕はこんなに君を想っているのに、君を抱きしめたいのに、僕が近づくと幻のように消えてしまう。逃げないでおくれ!君は僕が今まで会っただれよりも美しい。素敵な僕の恋人。でも、君は水に映った僕なんだね。ああ、どうしたら君は僕のものにできるんだろう。ああ、なんて悲しい恋なんだ。

ナルキッソスは河神と水のニンフの間に生まれた。予言者から「この子は自分の姿を見ることがなければ長く生きるだろう」と言われていた。彼は美しい少年に成長し、多くのニンフ(エコーもその一人だった)や、女の子、男の子たちから愛を寄せられていたが、いくぶん冷ややかで高慢なところがあり、ことごとく拒絶して来た。その中の一人の若者は冷たくあしらわれた腹いせに「彼もいつか恋をするようにして下さい」と、神に願い、自害した。そのため、ナルキッソスは水に映った自分に恋をするしかなかった。そして、その不毛の愛に憔悴(しょうすい)し、切ない一言を残して短い生涯を終えた。「さようなら、恋人よ」このとき、あのナルキッソスを愛したエコーも「さようなら、恋人よ」と答えるだけだった。気づくとそこには少年の姿はなく、泉のほとりに可憐な水仙の花が頭をかしげて、水に映った自分の姿に見とれていた。

*ナルキッソスは「水仙」の意。ナルシスト(自己愛、うぬぼれ)はこの話から出ている。
 
 

 

 

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